なぜYouTubeのコメント欄はカオスなのか?

SNS掲示板、動画サイト等、ひとくちにネットのサイトと言えど様々な形態のものがあります。それぞれのサイトやサービスに独特の空気感があることは、インターネットを使う人なら誰しも感じることだと思います。

例えば、2ちゃんねる(5ちゃんねる)。2ちゃんねる自体、討論するジャンルごとに異なる板が存在し、その板ごとに独特の空気感が存在しますが、総じて映画「電車男」的なイメージを持つ人が多いと推測します。

最近では、HIKAKINをはじめとするYouTuberが若者の憧れのアイコンとして台頭し、YouTubeというサイト、YouTuberという職業が一般に認識されるようになりました。

しかし、人気YouTuberの動画のコメント欄は混沌そのものです。動画を閲覧した感想から誹謗中傷、動画に全く関係のないことまで、さまざまなコメントが羅列されています。

なぜ、人気YouTuberの動画のコメントはカオスになるのか、考えてみました。

 

コメントする時点で普通の人じゃない

そもそも、あなたはYouTubeでコメントをしますか?

私はYouTubeを頻繁に利用し、興味のある動画を観ますが、一回もコメントをしたことがありません。

Twitter2ちゃんねるは、文字によるコミュニケーションがメインですが、YouTubeはあくまで動画の閲覧がメインです。

したがって、文字によるコミュニケーションを行う必要性はなく、YouTubeのコメント欄を使用しなくても、YouTubeというサイトを十分に楽しむことができます。

では、どのような人がわざわざコメントをするのでしょうか?

まずは、アップロードされた動画、または動画の製作者に好意を抱くファンが挙げられます。ファンの中でも、私の書いたコメントをぜひ読んでもらいたい、好きという気持ちを伝えたいといったような強い意志を持った人が多いと思われます。

一方で、アップロードされた動画、または動画の製作者に嫌悪感を抱くアンチも挙げられます。ただのアンチではなく、自分のコメントで傷ついてほしい、嫌いという気持ちを伝えたいといったような強い悪意を持った人が多いと思います。

このように、YouTubeのコメント欄はわざわざコメントをするくらい好意を抱いているファンとわざわざコメントをするくらい悪意を抱いているアンチの対立構造が発生しやすく、普通の人がなかなか現れないためカオスに陥りやすいと考えます。さらにそこへ極端な年少ユーザーのコメント、外国のユーザーのコメント、理解できない支離滅裂なコメントなどが加わるため、カオスな状態に拍車がかかります。

 

YouTuberにプロもアマもない

YouTubeのコメント欄に常駐するユーザーで自らも動画クリエイターであるユーザーはごく稀です。つまり、動画クリエイターと「見る専」は明確に分かれています。したがって、「見る専」のアカウントページには動画やその他の情報が載っていない場合が多く、匿名状態のユーザーになり得ます。

「見る専」の人の特徴として、いかなる動画も一律に評価することが挙げられます。「見る専」の人はYouTuberはプロとアマの線引きが曖昧であるため、有名アーティストのミュージック・ビデオも昨日YouTubeを始めた一般人の動画も平等に評価します。したがって、「この人、これが2回目の動画でしょ?よくやったと思うよ」といったように初心者だから妥協してあげるという姿勢はなかなかみられません。

クリエイターが動画の質をあげるのに長い時間と労力を必要とするのに対し、「見る専」の人は動画を見れば見るほど目が肥えていき簡単にプロの「見る専」になれます。したがって、彼らのコメントは痛烈でありながら、意外と的を得ていることも多く、「見る専」>クリエイターという強弱関係が生まれやすいのです。コメント欄が強すぎることがYouTubeのコメント欄の特殊性の一因であるといえます。

 

まさかコメントを読んでくれていたとは…

自分でコメントをしておいて、YouTuber側から何らかのレスポンスが来た際に、このような反応をするユーザーがいます。

人気になればなるほど、ひとりひとりのコメントは埋もれていきます。したがって、製作者も忙しいし絶対コメントなんて読んでいないだろう、自分のコメントも埋もれるだろうと考え、ダメ元でコメントをするユーザーが現れます。そういったユーザーのコメントは動画の製作者を意識したものではなく、どちらかというとその動画の閲覧者を意識したもの、あるいは独り言のようなものになります。

例えば、「◯◯と思う人はいいね(を押して!)」と閲覧者の共感を呼ぶコメントや、「△△ってコメントしてる人はなんなの?」と閲覧者を煽るコメントが挙げられます。

たまに、誹謗中傷コメントをしておいて、そのコメントに製作者が何らかのリアクションを起こした場合、素直に謝罪するユーザーがいます。謝るくらいなら最初から誹謗中傷コメントなどしなければ良かったのでは?とも思いますが、そのようなユーザーは最初から製作者を攻撃する意図はなく、あくまでコメント欄にいるアンチの共感を集めたかっただけだと考えられます。

 

このように、YouTubeのコメント欄はファンとアンチが入り混じる現実世界ではありえない状況になりやすい上、全てのユーザーが製作者に向けたコメントを残すわけではないためコメントのベクトルがバラバラ、さらに本来主役であるはずの動画製作者が弱者となりおまけのコメント欄にいる「見る専」が強者なるという複雑な環境であるといえます。このような複雑な環境こそがYouTubeのコメント欄のカオスだと考えます。