JO1が変える?これからの日本の男性アイドル界隈(前編)

 2020年、日本の芸能界に颯爽と現れたJO1。日本における男性アイドルの歴史とはすなわち、ジャニーズの歴史…という時代が終わりを見せています。これからの日本の男性アイドル界隈がどのように変化していくか、予想、というか妄想します!前編では、なぜJO1が日本の男性アイドル界隈の今後を左右するまでになれたのか考察します。

 

【JO1が"許された"2つの理由】

 ジャニーズ事務所が、他事務所の男性アイドルグループやそれに類するグループに圧力を掛けているのは周知の事実です。

 それが顕著に現れたのは、2017年に放送されたフジテレビのバラエティー番組『めちゃ×2イケてるッ!』の「次世代イケメンだらけアイドル30人大運動会」という企画でした。この企画の原題は「ジャニーズ以外だらけの大運動会」でしたが名称が急遽変更、このタイトルがプリントされた小道具・大道具にボカシが入るという異例の事態となりました。ちなみに、女性版の企画のタイトルは当時圧倒的な人気を博していたAKB48以外だらけの大運動会でした。ジャニーズ事務所が何に腹を立てたのかはわかりかねますが、ジャニーズ以外の男性アイドルにスポットライトを当てたこと、AKB48という時の人気「グループ」と、日本の男性アイドル史を築き上げてきた「事務所」が同列に扱われたことなどが気に障ったのかもしれません。

 このように、ジャニーズ事務所は他の男性アイドルに圧力を掛け、メディアもそれに応じてきました。では、なぜJO1はジャニーズ事務所からの圧力を逃れ、メディアへの露出が可能だったのでしょうか?

 

①「吉本興業」という盲点

 男性アイドルに関しては、ジャニーズ事務所が大手かつ老舗で、スターダストをはじめとする他の大手事務所は太刀打ちできず、男性俳優ユニットなどと銘打ち事実上のアイドル活動をする他ありませんでした。

 しかし、ここで盲点だったのが吉本興業でした。吉本興業といえば、名だたるお笑い芸人を輩出した大手事務所ですが、まさか男性アイドルの運営に本格的に着手するとは誰も想像していませんでした。歌番組が減少し、バラエティー番組が増加する中、吉本興業の影響力は強くなっています。吉本興業が制作に携わる番組であっても、そうでなくても、吉本興業の芸人がMCを務め、ひな壇に呼ばれ、VTRにも登場する。つまり、少なからず今日のテレビ界においては、吉本興業の存在感はジャニーズ事務所の存在感を上回ります。そのため、ジャニーズ事務所吉本興業へ圧力をかけにくいといえます。

 このことを積極的に利用して、JO1は吉本興業が制作に携わる番組や吉本芸人がMCの番組などを中心に出演しています。(なお、JO1を輩出したオーディション番組の司会は、皮肉にも前述のジャニーズ以外だらけの大運動会で司会を務めたナインティナインでした。)

 未だにMUSIC STATIONをはじめとする音楽番組に出演できないといった問題はありますが、バラエティー番組に出演しやすいという環境は彼らにとっての強みと言えます。

 さらに、ソフトバンクGYAOYahoo!といった吉本興業や吉本芸人とゆかりのある大手スポンサーがついているため、バックアップ体制も十分にあると言えるでしょう。

 

②「K-POP」だよね…?

 これまでジャニーズ事務所が許してきた男性グループは2ジャンルあります。

 1つはLDH系列のグループです。彼らも実質的なアイドル活動を行なっていますが、アイドルではなくアーティストという姿勢を前面に打ち出し、ジャニーズからの圧力を回避してきました。

 もう1つはK-POPグループです。他国の事務所であり、音楽であるため、圧力がかけにくいという側面があります。また、今でこそジャニーズは世界展開に力を入れ始めK-POPを意識していますが、ジャニーズが絶対に守りたいのは日本での圧倒的な優位性です。日本での揺るぎない地位が守られるのであれば、多少韓国から自分の畑を荒らされにきても問題ないというスタンスなのでしょう。

 JO1のメンバーは全員日本人であるものの、JO1を輩出したオーディション番組の版権元は韓国であり、韓国のフォーマットを使ってデビューしたグループと言えます。デビュー後も、楽曲や振付、衣装やメイクに至るまで、韓国の要素が取り入れられています。一言で表すならば「日本のK-POP」でしょう。

 そのため、ジャニーズ事務所もJO1をK-POPグループとみなすかに困惑しているように見えます。NHKの「SONGS OF TOKYO」のホストを務める関ジャニ∞の村上信吾は、JO1をゲストに迎えた際に、JO1に対する明確な評価は避けながらも、「韓国の要素を取り入れ世界を目指しているグループ」として接しているように窺えました。この姿勢を取ることによって、純日本製かつ日本市場のトップはジャニーズであることを暗に示していたとも考えられます。

 

このように、吉本と韓国という敵に回しにくい/圧力をかけにくい2つを味方につけたJO1はジャニーズからの圧力を回避している/保留されているといえます。

JO1の存在感が増すにつれて、日本の男性アイドル界隈はどのように変化していくのでしょうか?続きは後編で!