アイドルの男女共同参画 - 吉本坂46への期待

先日、吉本坂46の第1期生メンバーがお披露目されました。

48グループ・坂道シリーズでは初めてとなる男性メンバーを受け入れ、50代・60代のメンバーが10代のメンバーと共に活動するという規格外のグループが生まれました

激しい鍔迫り合いを行う総選挙や連日行われる劇場公演をアイデンティティーとする48グループに対し、坂道シリーズは(48グループと比較して)上品・クール・ルックスが良いというアイデンティティーを築き上げていました。したがって、下品でクールでない、ルックスの良くないメンバーは受け入れられないという「吉本坂アレルギー」を起こすファンが現れました。

私はこのアレルギーに関してはあって然るべきものと思います。しかし、私が違和感を覚えたのは主に男性ファンが抱く「男性アレルギー」と「年長女性アレルギー」です。これは吉本坂46に限ったことではなく、アイドルファンが抱きがちな慢性的なアレルギーだと感じます。

極論を言えば、処女である女性以外アイドルではないのか?ということです。

吉本坂46の活躍によって、ファンの慢性的な「男性アレルギー」と「年長女性アレルギー」は治るのではないか?と期待しています。

 

「男性アレルギー」の何がいけないのか?

アイドルは清純であるべき、男性との私的な関わりは避けるべきという思想は、アイドルを応援するうえであって当然なものだと思います。

女性だけのアイドルグループはいわば女子校です。そのアイドルグループが行うコンサートやイベント等はあくまでその女子校の中で行われる「内輪」のものです。

しかし、女子校の一歩外へ出ると男女比1:1の世界が待っています。それが(一般)社会です。女性アイドルグループは今いるファンを大切しながら、いかに一般人をファンにするか、つまり、どのようにしたら一般社会にいる人々に女子校の敷地内に入ってもらえるかも考えなければなりません。

したがって、アイドルグループは男女比1:1の世界に迎合しようとします。このことは、アイドルグループの冠番組を見れば一目瞭然です。AKB48ならウーマンラッシュアワー乃木坂46ならバナナマン欅坂46なら土田晃之とハライチ澤部、けやき坂46ならオードリーといったように、いずれも男性芸人をMCに起用しています。このMCという役割まで女性芸人、女性アナウンサー、もしくはメンバーの誰かが担ってしまえば、現実の女子校よりも女子校らしい状況が完成し、ファンではない人から見たら奇妙な環境に見えるでしょう。

アイドルの冠バラエティー番組のMCにはアイドルと年齢が離れている、プロとしての信頼感がある、そしてイケメンではない男性芸人がキャスティングされやすいため、ファンも彼らは恋愛対象ではないと判断し受け入れます。しかし、ドラマではアイドルと年齢が近い、芸歴の浅い、そしてイケメンの俳優と共演することも考えられます。

48グループのメンバーが多数出演するヤンキードラマ「マジすか学園」シリーズは馬路須加女学園が舞台でした。(3は刑務所が舞台だが囚人に男性はいない。)しかし、現在放送されている「マジムリ学園」は「嵐ヶ丘学園」という共学の高校が舞台となっています。

「男を出すくらいなら他のメンバーを出せ」「共演者同士で繋がってしまう」「ファンの嫌がるごとをしてファンを坂道に流そうとしている」などと舞台の設定が女子校から共学校に改変されたことに、反発する声が上がりました。

しかし、今回のドラマが他のマジすか学園シリーズと比較して、ファンではない一般層を意識して制作されているのは明らかです。マジすか学園シリーズの特徴として、ドラマの冒頭に「学芸会の延長です」という断り書きがあることが挙げられますが、今回のマジムリ学園にはありません。また、今回のドラマのオープニングムービーは役名の紹介にとどまり、小栗有以(AKB48)のように出演者の名前は表示されません。つまり、このドラマは48グループのドラマではなく、ドラマに48グループのメンバーが出演しているというスタンスに近いのです。

このように、女子だけの環境というのは女子校の中でしか起こり得ず、いわゆる外仕事、外を意識した仕事には男性も必ずついてきます。また、女子校の外はメンバーが卒業後に生きていかなければいけない世界でもあります。女子校しか知らずに活動してきたメンバーは、卒業後、外の世界で苦労することになるでしょう。さらに、こんなこと言ったら元も子もありませんが、女子校の生徒は女子だけかもしれませんが、職員・スタッフには男性も当然います。NGT48・山口真帆が「私はマジムリ学園の撮影でも男性スタッフとは殆ど話さないようにしてる」 と発言したようですが、それはただの社会性のない人です。アイドルもファンも一般社会、すなわち男女比1:1の世界に適応する必要があります。

女性アイドルグループのプロデュースに定評のある秋元康ですが、最近では「吉本坂46」だけでなく「劇団4ドル50セント」「青春高校3年C組」といった男女混合のグループをプロデュースしています。秋元康も男女比1:1の世界で活動できる人材を育て上げたいのはないでしょうか。

 

「年長女性アレルギー」の何がいけないのか?

そもそも、なぜ48グループ・坂道シリーズのメンバーは「卒業」しなくてはいけないのでしょうか。

48グループ・坂道シリーズを卒業するメンバーは卒業後の進路として女優になることを挙げがちですが、ジャニーズ事務所所属のタレントはグループとしての活動を続けながら俳優としても活動しています。ジャニーズ事務所所属のタレントに対して「おっさんが歌って踊ってるのは見苦しい、アイドルを辞めろ」という声はなかなか上がらないですが、女性アイドルに対しては20代後半ごろから「おばさん」などと呼ばれるようになり、「早く辞めろ」と老害呼ばわりされます。

AKB48篠田麻里子は「『後輩』に席を譲れ」と言う方もいるかもしれません。でも、私は席を譲らないと上に上がれないメンバーはAKBでは勝てないと思います。」という名言を残しましたが、翌年には卒業を発表し、事実上、後輩のために席を譲りました。

なぜ年長メンバーは年少メンバーのために席を譲らなければならないのでしょうか。

グループの新陳代謝という理由は筋が通っていると感じます。人気メンバーがずっと前にいてしまっては、グループとしての成長が見込めません。48グループ・坂道シリーズのグループはジャニーズ事務所のグループと構造が異なり、後者の方がずっとアイドル活動をしても、後輩に迷惑のかからない構造に設計されていると言えます。

しかし、少なからず「おばさん」だから辞めてほしいという、「おばさん」を拒絶するファンもいます。そういうファンがアイドルを応援するうえで重要視する傾向にあるのは処女性であるため、アイドルは若ければ若いほど良いと考えます。

以前、大人AKBとして既婚者で2児の母である塚本まり子さんが期間限定で加入した際、彼女が処女でないからといった理由から彼女を批判するファンがいました。そう批判するファンは、非処女である人を伝染病のように扱い、処女である他のメンバーに悪影響が及ぶと考えます。

アイドルに処女性を求めるのは異常なことではないと考えます。しかし、非処女である人をアイドルとして認めないどころか、非処女は移るといったように考えるのは病的です。そもそも、アイドルが処女であるかどうかは本人しか分かり得ないことで、何百人いるアイドルグループのメンバー全員が処女であることなど、まずないでしょう。

また、男性が妻帯者であろうが父親であろうがアイドル活動ができるのに対し、女性の既婚者、母親はアイドル活動ができない、しにくいというのは平等ではありません。

かつて、SDN48という既婚者も在籍することができたグループが存在しましたが、今は活動していません。吉本坂46が女性の既婚者もアイドルとして活躍できることを証明してほしいと期待します。

 

「PRODUCE48」に見るアイドルの男女共同参画

まず、私は韓国のアイドル事情には詳しくないことをお伝えしておきます。しかし、最近「PRODUCE48」という番組を見始めました。

「PRODUCE48」は「PRODUCE101」というオーディション番組の第3弾で、第1弾では「I.O.I」という女性アイドルグループが第2弾では「WANNA ONE」という男性アイドルグループが生まれました。

日本の番組で例えるなら、「ラストアイドル」Season1で女性アイドルグループが誕生した後に、Season2でSeason1と全く同様の方式で男性アイドルグループを製作する感じでしょうか。

これは、まさに男女が同じように扱われ同じようにアイドルとしてデビューする男女平等だと感じます。

しかし、これは日本では絶対に起こり得ません。その理由は、男性アイドルがジャニーズ事務所の独占市場になってしまっているためです。

(個人的に、ジャニーズはあくまでジャニーズであって、女性アイドルと対になる男性アイドルではないと考えます。このことは別記事で詳細に説明します。)

他にも、日本では絶対に起こり得ない現象が多々見られました。例えば、「PRODUCE48」のMCは、アイドルの先輩であるイ・スンギさんが務めています。日本で例えるなら、SMAPのメンバーが「ラストアイドル」の司会を務めるといった感じでしょうか。これも、日本では起こるはずがなく、実際の同番組の司会は、シーズン2こそユースケ・サンタマリアであるものの、シーズン1は伊集院光、シーズン3はカンニング竹山といったように、アイドルとは無縁の男性芸能人が務めています。

また、PRODUCE48の練習生たちはグループに分かれ課題楽曲を披露しますが、その課題楽曲の中には男性アイドルグループの楽曲も含まれていました。日本で例えるなら、嵐の楽曲をアイドルになりたい女の子たちが披露するといった感じでしょうか。これも絶対に日本では起こり得ません。嵐の楽曲を選択した時点で、ジャニヲタだと批判されてしまうでしょう。

このように、韓国では男性アイドルと女性アイドルが対になっているのに対し、日本では女性アイドルと対になるはずの男性アイドルがジャニーズという一癖ある事務所によって寡占されているので歪みが生じています。

また、アイドルを容姿の優れた異性のアイドル・芸能人から隔離させる、また、アイドル自身もそういった異性からは距離を置くことを選ぶ環境は、韓国では決して見られないわけではありませんが、日本では過剰であるといえます。

 

いかにしてアイドルの男女共同参画を果たすか?

男性ファンが抱く「男性アレルギー」(あるいは、女性ファンが抱く「女性アレルギー」)を治す方法は2つあると考えます。

1つ目は、免疫療法です。吉本坂46をはじめとする男女混合グループやマジムリ学園のような異性も登場するアイドル番組などが次々と制作されることで、ファンも自分の応援するアイドルが異性といる環境に慣れていきます。つまり、アイドルが魅力的な異性がいると恋愛関係になってしまうのではないか?という不安も消えていくと思われます。したがって、アイドルに求められるのはプロ意識です。魅力的な異性に好意を持つのは自由ですが、それを決してファンに見せないことに細心の注意を払う必要があります。

2つ目は、日本の女性アイドルと対になる男性アイドルの登場です。やはり、AKB48とジャニーズは同じ「アイドル」とされていますが全く異なるものです。しかし、日本にも韓国のアイドルのように男女で対になっているグループが存在しています。それは、EXILEE-girlsの関係です。この2グループはパフォーマンス集団として対になっているため、共演したり互いに言及しあったりしても問題は生じません。これは、同グループのメンバーがお互いのグループのメンバーを魅力的な異性としてではなく同じプロのパフォーマーとして捉えているから成り立つ関係性といえます。したがって、女性アイドルグループのメンバーが魅力的な異性としてではなくあくまで同業者であるアイドルとして捉えることができる男性アイドルグループが登場すれば、アイドルを魅力的な異性のいる環境から隔離させたいというファンの気持ちが薄れるのではないかと考えます。

そして、「年長女性アレルギー」の治し方に関しては、年長女性アイドルに活躍してもらうほか方法はありません。吉本坂46の年長女性メンバーに期待がかかりますし、そろそろ48グループ・坂道シリーズから「卒業しないアイドル」が現れてもいい頃かなと感じます。